ORANGE

Exploitation /Exploration

あるようでない、ないようであるつながり

デジサーチ、実は東大の先生と「AIの共同研究」もやっています。

今日は、そのZOOM会議に、初めて参加しました。

「 AIにたくさんジョーダンを学習させたら、まだ誰も見たことないジョーダンの画像を作ってくれるかもしれない!」

AI×ファッションで、どんなことができるのか。100足を越える、AIが生み出したスニーカーのデザインを、みんなで見たりしました。

デジサーチのスニーカーオタクもびっくりする組み合わせもあったり。

「AIデザイナー、いいじゃん!」

思わず、そう言いたくなる斬新なスニーカーの画像も並んでいました。

会議で話題の中心となったのは、ディフュージョンモデル。

AIの画像生成の新しいモデルで、2020年に論文で発表されたばかり。日本語で検索しても、まだ情報はほんとど出てきません。

それまで、AIの画像生成の分野を引っ張ってきたのGANモデル。2014年の登場は衝撃だったそうです。GAN、styleGAN、styleGAN2と、着実に進化してきました。

たとえば、たくさんの顔の画像を学習させて、混ぜる。混ぜる割合を変えたり、混ぜるところを変えたり。そうやって、全く存在しない人の顔を高精度に作れるのがGANモデルでした。

でも、その進化とは、全く別のアプローチとして登場したのが、ディフュージョンモデルです。

元の顔の画像に、数学的にノイズをかけて、分からなくする。そこからAIに元の顔を想像してもらう。すると、人間からみれば今までよりもクリエイティブな、顔の画像が生み出せるそうです。

AIは、画像を混ぜるより、画像を想像した方が、優れたデザイナーになる──この大発見は、機械学習ではなく、物理学の発想から生まれました。全く違う分野から新しいものが入ってくることで、時代はグッと進むものなんですね。

会議では、このディフュージョンモデルで何ができるかの話で盛り上がりました。

音楽の話なら……

「平均律の世界では、音階やコードが決まっているから、ルールを学ばせれば、クリエイティブな曲って意外にAIでできるんじゃないですかね?」

「それは、音楽のルールが、微分可能かに、かかっていますね」

「音楽のルールって、微分できるのかな?ピアノの平均律より、倍音の純正律の方が数学的だから、相性が良さそう!でも、そもそも平均律はノイズを入れてるから、ノイズっていう意味ではデフュージョンっぽいですね」

経済の話なら……

「過去の履歴と最近のトレンドから学習するのが最近のAIだと思っていて、ディフュージョンモデルって、あんまり過去に囚われないモデルなのでは」
「過去に囚われないというより、新しい階段が増えるイメージ。進むべき方向が見える。広がっていく。もしかしたら、金融で面白いかも」
「ノーベル経済学賞をとった金融工学のブラックショールズモデルは、ディフュージョンモデルに考え方が近い気がしている」
「あ、wikipedeiaで数式をみてみたら、定式化のところは、ディフュージョンモデルと同じですね!」
「じゃあ、金融工学も結構進化するかもしれないですね!」

そんなちょっとマニアックな話もしながらも、実はつながっていたりするのが、面白かったです。

新しいつながりが生まれるところを、察知できるかどうか。

詳しい道は分からなくても、大きな山や川の特徴は知っている。起業家なら、いつでも探索に出れる方がいい、かもしれません。

知ってるところを深めるのもいいけど、外に新しいことを探しにいくことも忘れずに。

感度を持って経営することは、とっても大事。そんな気がしました──R.Y

※このメディアは企業再生案件など、センシティブな話題があるため、登場人物は全て仮名で表記しております。

Make a Bonsai

完コピ、そしてカスタマイズ

『子どものころ、LEGOが好きだったひと』。

──そんなキャッチコピーで、新卒採用の広告を出しています。

セミナーに来てくれた学生さんも「LEGOの広告を見て応募しました」なんて言ってくれるのですが、この広告、そもそもデジサーチのなかに『子どものころ、LEGOが好きだったことがあるひと』が多かったことがきっかけなんです。

でも、LEGOの魅力ってなんなんでしょうか?

デジサーチの東さんが「最近LEGOを買った」というので、聞いてみました。

大人になってからLEGOを作ってみて、東さんは気づいたそう。

東「LEGOは、定型と逸脱の繰り返し。まずは説明書どおりに作ってみて、一度完成させてから、それを崩していくのが楽しいんですよね」

定型と逸脱。

それは、僕たちの仕事にも似ているかもしれません。

入社してすぐのころは、わからないことばかり。だから先輩の仕事を見て、それを「定型」として、まずは完コピする。慣れてきたら、自分なりにカスタマイズしてみたり。

「逸脱」していくなかで、自分にとっての向き不向きがわかっていく。向いているところが伸びるように自分で環境を作って、向いていないところは、ひとに聞く。

子どものころ、LEGOが好きだったひとは、定型と逸脱を体得しているのか!

…なんていうとさすがに大げさですが、なんとなく、そういうひとたちが集まってデジサーチができているのか、と納得しました。

ちなみに、東さん、なんのLEGOを買ったのでしょうか?

東「盆栽にしました」

僕「おお。その心は?」

東「リアルな植物は枯らしてしまうけど、これはずっと飾れるから」

なるほど──H.N

※このメディアは企業再生案件など、センシティブな話題があるため、登場人物は全て仮名で表記しております。

Stop / Move

トップランナーって、なんだ?

「もう一回、今度は娘と一緒にやっていこうと思って……どう思いますか?」

今日は、笹原さんがオフィスにご相談にやってきた。笹原さんは、デジサーチがシングルマザーファンドで支援している起業家の一人です。

「シングルマザー(一人親)ファンド」とは、自立したいシングルマザー、シングルファザーの皆さんのために、3年前にはじめたプログラム。

子育てしながら働く一人親の方には、時間・場所に縛られない「起業」は、新しい働き方の選択肢になるのでは? これは、デジサーチから社会への提案でもあります。

「1人でも多くのシングルマザーに届くよう、皆さんに拡散をお願いします」とプレスリリースを出して、全国からたくさんんのご応募をいただいた中から

「この人なら、きっとやり抜ける!」とデジサーチのクリエイターたちが信じた3人の方を、第1期として迎えました。

デジサーチが提供するのは、磨いてきた「経営とクリエイティブのスキル」と「事業資金1000万円」。記事を書いたり、画像・動画を作ったりするWEBメディア事業での起業をサポートします。

シングルマザーの皆さんには、会社の経営権と所有権を全て持ってもらう。そのために、通常のベンチャー投資と違って、投資のリターンは、しっかりと売上があがったら後に「出世払い」で返してもらう独自の仕組みです。

3人がシングルマザー起業家となって、3年。2人は黒字化。そのうち1人は、未経験から月100万円の売上を突破しました。「人を雇おうか、どうしようか?」と起業家らしく悩みはじめているところです。

今回、相談にきた笹原さんは、半年ほど仕事の手を止めて、家族との関係や自分を見つめ直していました。「自分に合う働き方ってなんだろう?」と、高校生の娘さんを育てながら考えていたそうです。

今、もう一度はじめてみよう。そうと思ったのは、どうしてだったのでしょうか?

実は、笹原さんが手を止めている間にも、かつて一生懸命込書いた記事が、WEB上でずっと読まれ続けていたんです。そして、毎月10万円ほどの収益も。これは、笹原さんの記事が、世の中の人の役に立っている証、といえるかもしれませんね。

さらに、リスタートしようとしたとき、「わたしも、一緒にやりたい!」と、娘さんが手伝ってくれました。それが、笹原さんにはすごく嬉しかったそうです。

「一緒に、もうちょっとやっていこう!」ということで、これからは娘さんに仕事をお願いしていこうと思っている。今日は、そんな相談でした。

デジサーチの田中さんの答えは、とてもシンプル!

「あ、いいじゃないんですか!そのまま、やっていったらいいじゃないですか。うちで支援していきますよー」だそうです。

「もちろん、今後もまた状況は変わるかもしれない。でも、いいんです。しなやかに、やればいいじゃないですか。自分がやりたいと思った通りのことを、コツコツやっていくしかないんですよ」

ちなみに、笹原さんが休んでいる間、彼女の記事が掲載されているサイトのちょっとしたメンテナンスは、シングルマザーファンド1期生の他の2人がやってくれていたそう。

「3人がそういう関係だったのが、すごいよかったなー、と思って」

実は、シングルマザーファンドをはじめるとき、デジサーチのスタッフたちで思い描いてことがあります。

もし、支援したシングルマザー起業家さんが、ちゃんと売上を立てられるようになったら……。

彼女たちが、同じように、子育てしながら働くシングルマザーの方を雇ったり。投資のリターンとして返ってきたお金を、次世代の起業したいシングルマザーに再投資したり。

「あたたかいお金の巡り方」をデザインすることで、そんな支援の輪が広がる生態系になっていったらいいな——スタッフたちで思い描いていた理想に向けて、一歩前進している。そんな気がしませんか?

「ある意味で、一番出遅れている、と言えるかもしれない笹原さんが、娘さんを雇った。月の売上が100万円を超えている人はまだ雇っていない、というのが面白い感じがしませんか?誰がトップランナーかも、分からない。もしかしたら、笹原さんがトップランナーかもしれないですよね」と、田中さんは、ボソッと言いました。たしかに、そうかもしれません!

人の成長、会社の成長って、なんでしょうか。今日は、そんなことを考えました──R.Y

※このメディアは企業再生案件など、センシティブな話題があるため、登場人物は全て仮名で表記しております。

Up to Me

それも、これも、わたし次第

「今日、会議始まる前の10分間、みんなで社内片づけましょう!」

そんな声掛けから始まる、デジサーチの社内清掃。

清掃っていうと、ちょっと堅苦しいかもしれません。片づけ、ですね。

「片付けよう!」その掛け声とともに、それぞれが立ち上がって掃除を始めます。

社内の真ん中にある机の上を片づける人、窓際の植物に水をあげる人、エントランスの窓ガラスを拭く人まで──掃除の仕方は10人10色。それぞれが必要だと思ったことを、自分で決めて、自分でやります。

入社したては、どこを掃除していいか悩んで固まってしまっていた私。学校でしていた掃除は、割り振られた場所を掃除するだけだったんだもの。

「決断することが大事。自分で決めて、実際にやってみること」

これは、デジサーチに入って、1番意識していることです。

プロジェクトを進める大きな決断から、メルマガのテーマくらい小さな決定まで。

たった10分の掃除にさえ、実はこの考え方は活きてるんだなあ……

そんなことを考えていた、水曜日の朝でした──M.K

※このメディアは企業再生案件など、センシティブな話題があるため、登場人物は全て仮名で表記しております。

Invisible Oasis

みえないオアシスを探して

朝、スタッフの田中さんが電話をくれた。昨日は、企業再生の相談で音楽業界の方と話したそう。

音楽業界と聞けば、華やかなイメージが強いですが、そこはビジネスと権利関係が絡みあう複雑な世界。著作権、大手レコード会社、作詞家・作曲家。昔のようにCDの売り上げでは食べていけません。でも、Youtubeのような新しい大きな波が来ていても、簡単には乗っていけず、むしろ新しい挑戦を邪魔する力も働きやすかったりするそうです。

デジサーチからみえば、長く携わってきた伝統工芸の業界と似ているように思えました。最後まで残っている大きな問屋が「うちだけに卸してください」と作り手を縛る。新しい挑戦をしたい作り手は、業界から距離をおいて、大手をあてにしない個人活動をはじめます。

”うちだけと取引をしてください”

”うちを通さないと仕事はしてはいけません”

”それはあなたの仕事ではなく、私たちの仕事。手を出さないで”

契約、慣例、しがらみ──あらゆる形で自由な行動の妨げるものを、田中さんは「エクスクルーシブな関係性」と表現します。

「斜陽産業であればあるほど、エクスクルーシブな関係を強要しようとする動きがあるんです。でも、全体が市場拡大する、みんなで幸せになろうとするなら、それとは反対のインクルーシブな関係がいるんですよ、本当はね」

そこから、田中さんとは、そんな古い業界を目の前にした時に「起業家ならどうするか?」という話題に。

もし、あなたが起業家で、その業界が大好きだから、もっと良くしたい。生まれ変わらせて、ずっと残ってほしいと考えるなら、どんなことをするべきでしょうか?

「まずは、誰も誰も傷つかない方法を考える」というのが田中さんのアイデアです。

業界の御作法と古さ、エクスクルーシブな関係を理解することは大前提です。そこから旧態依然とした業界を壊しにいっても、古さに不平不満を言い続けも、意味はないかもしれない。誰も怒らない分野を見つけて、しなやかにはじめよう。それが田中さんの提案でした。

「既存の事業の中に、業界のしがらみに縛られないところが必ずあるんです。言ってみれば、オアシスみたいなところですよ。探して出して、そこからはじめるんです」

オアシスは、新しい流れの中に隠れています。

例えば、ライブネット配信。コロナ禍だから生まれた新しい分野を「オアシス」として見つけ、しなやかに事業を作りはじめた起業家たちがいました。

厳しい著作権の中でも「ライブをすること」「ライブをストリーミング配信をすること」は許される。誰の権利を侵害することもありません。むしろ、ライブの機会を失ったアーティストたちやレーベルから感謝される価値ある挑戦になりました。

もし、田中さんなら。

「有名な曲を交換して、アーティストが歌い合う」といったエクスクルーシブな関係性をうまく回避するアイデアを盛り込みながら、配信サービス自体に新しいファンを増える仕掛けを作る。そうして次の展開を作る基盤とすることが狙いだそうです。

目の前に広がっているのが、心休まる隙もない大都会でも、全てが朽ち果てかけた砂漠でも。壊さない、嘆かない。あなたにしかみえない、オアシスを探そう!

それが一番優しくて、みんなで喜べる気がしませんか?──R.Y

※このメディアは企業再生案件など、センシティブな話題があるため、登場人物は全て仮名で表記しております。

Throw a Period

ピリオドを投げてみる

先日から、仕事で動画の編集をはじめました。

やってみて、思ったこと。

「これは、無限だ……」

10秒の動画を編集したら、それをまた10秒見る、の繰り返し。

静止画の編集の何倍も時間がかかるし、音楽、タイミング、そもそもの動画素材、こだわりだしたらキリがありません。

学生時代に映画を撮っていた、同僚の山下さん。

「映画の編集って、どこで区切りをつけるんですか?」

と聞くと

「映画祭の〆切」

という答えが返ってきました。

なるほど。こういう仕事はそもそも、終わりがないと終わらないものらしい。

*  *  *

自分の未来に向かってピリオドを投げることができるか。それって、仕事を進める上で大切な考え方ではないでしょうか。

一人でもんもんと考え続けると、だんだん気分も沈んできます。

メルマガだって、週1回書いて送り、読者の反応を見た方が楽しいし、結果的に学びになることも多いような気がします。

世に問う、反応を確かめる、そして変化する──思えば、そのプロセスそのものを楽しんで(時に苦しんで?)いるのが、起業家という人たちなのかもしれませんね。 「リーンスタートアップ」ってこういうこと、なのかな?

起業家に限らず、トップYouTuberのヒカキンだって、毎日動画をアップしています。

負けてられないな、というわけでもないですが、自分の仕事にピリオドを打つ鍛錬として、今朝も6時に起きて、せっせと昨日の日記をnoteにアップした僕なのでした(子供が起きたらそこまでなので、終わらせる練習にちょうどいいんです)──A.H.

※このメディアは企業再生案件など、センシティブな話題があるため、登場人物は全て仮名で表記しております。

Fountain of Ideas

アイデアの泉

「商品名、考えてみたんですけど、コレ!っていうのがまだ思い浮かんでなくて…」

入社して1年目の木下さんが、担当ブランドの期待の新作を前に、眉間にシワを寄せながら思い悩んでいる。

どうやら、周りの先輩たちに「コンセプトはすごく良い。商品名聞いたら速攻でコンセプトが伝わるような、いい商品名が付けられるといいね!」とアドバイスを貰い、先ほどから延々と考え続けている様子。

それを聞いた先輩の大木さんはサラッと一言。

「みんなでワークしてみたら?」

デジサーチでは、誰でも声をかけられてみんなでワークする時間を毎日設けています。

その時間に、全員で商品名を考える時間を10分使ってやってみた木下さん。

たった10分のうちに、30人から100個以上のアイデアが集まりました。

緑色でカッコイイ、メンズのお財布の商品名だったので

「恐竜っぽくない?」という誰かの一言から、「それぴったり!」と大盛り上がり。

「ジュラシックグリーンは?」
「T.レックスも字面がいいかも」
と色んなアイデアが出ました。

ワークを終えて、木下さんが一言。

「ぼく、3時間ぐらい1人で考えて何も出なかったのに……皆さんすごい……!」

それに対して大木さんは

「30人で10分使ったから5時間分使ってるけどね」と。

クリエイターが30人集まれば、そこはアイデアの泉。

よくあるデジサーチの日常でした──A.C
※このメディアは企業再生案件など、センシティブな話題があるため、登場人物は全て仮名で表記しております。

Our Pride

その失敗に、胸を張れますか?

今、クラウドファンディングに向けたプレスリリースを製作しています。今回、デジサーチから世の中にお知らせするのは、須藤先生のすごい研究成果。須藤先生は研究一筋30年の学者さんで「発見した治療法を、1日でも早く患者さんに届けたい」と還暦で大学を飛び出して会社を作った、とても応援したくなる起業家さんです。

須藤先生は「治療困難な脊髄損傷を、薬だけで治す」研究で、世界初の動物実験に成功しました。

偶然の事故で脊髄を傷つけて、車椅子や寝たきりの暮らしになってしまった……世界には250万人の脊髄損傷患者の方がいます。しかし、その90%にあたる症状が安定した慢性期の患者さんには、iPS細胞などを移植する従来の再生医療には、治療法が存在しません。須藤先生の研究ならば、慢性期の患者さんでも治療できる可能性があります。

革新的な研究ですが、まだ基礎研究の段階。実用化に向けては、毒性試験など、まだまだ越えなければいけないハードルがいくつも残されています。

こうした基礎研究の段階で、残念ながらお金が足りずに、患者さんに届けることができなかった研究の種は、世界中で数知れず。いわゆる「死の谷」です。

デジサーチと須藤先生は、そんな死の谷を超えていくために、億を超える金額をクラウドファンディングで集めることにしました。募集するのは寄付ではなく出資。成果が出た時に、利益を分配する仕組みです。

*   *   *

「脊髄損傷患者の方からの出資は、お断りすることにしましょう」

スタッフが全員参加する全体会議での話し合いの結果、みんなの賛成で、そう決まりました。

単純に「お金を集める」なら、脊髄損傷の苦しみを誰よりも知る患者さんご本人から出資をいただく方が話が早い気もしますが……「出資を貰わない方が、絶対いいよね!」自然とみんなの感覚は一致していました。

なぜ、こうした考え方がデジサーチの中で、支持されるのか。それは「失敗しても、胸を張れること」をすごく重要視しているからです。まさにプライドに関わる問題ですね。

全体会議でまず論点になったのは、今回のクラウドファンディングの特性について。新薬ができるか、できないか──これは0か、100の投資案件です。

「もう歩けないかも」と治療を諦めていた脊髄損傷患者の皆さんは、当然当事者なので期待をする。でも、そんな患者さんたちの気持ちを食い物にするようなことはしたくない、お金は使わせたくないよね、という話になりました。

「お母さんが膵臓病だったので、患者団体から寄付のお願いが来ることもあった。そういうのは、すごく嫌だな、と思っていた」あるスタッフの実体験も、みんなの心に響いたようでした。

「患者さんからお金は集まるかもしれない。でも、それじゃ失敗した時に、プライドが保てないよね」と、スタッフ。確かに、そうかもしれない!

デジサーチには「ダメだった時に、後ろめたい気持ちが増えるようなことはしないでおこうね」という感覚があります。なので、何かプロジェクトを始める時は、プロジェクトの理想の成功像を描くだけでなく、ダメだった時のことも、みんなで必ず想像するようにしています。

もちろん、挑戦に失敗はつきもの。世の中には「結果として、成功しなかっただけ。そこには責任はない!」という考え方だってあります。

でも、デジサーチのスタッフたちにとっては「その失敗に、胸を張れるか」「たとえ失敗をしても、笑顔になれるか」が、大切なんです!だから、事前にとことん話し合って、じっくりと仕組みをデザインする。そのプロセスを妥協しないのがデジサーチ流、と言えるかもしれません。

*   *   *

全体会議の結果、須藤先生のクラウドファンディングでは、脊髄損傷患者の方からの出資をお断りする代わりに「プロジェクトを広めることへの協力をお願いする」という設計に決まりました。

「弊社でも初めての試みなのですが、このクラウドファンディングでは広告費も利用して、広く出資を募っております。SNS等での拡散により広告費が削減されることも、プロジェクト協力の一端となりますので、広めることにご協力くだされば嬉しいです」

そんな文言で、プロジェクトに可能性を感じてくださった脊髄損傷患者の方へ、お金を出す以外にこの研究の前進に貢献する選択肢をつくり、仲間になってもらうこれは、デジサーチの考える「あたたかい金融」の実践、でもありますね。

基礎研究に億単位の大金を集めるクラウドファンディング。普通ならば、少しでも出資してもらえる可能性を上げたいと、考えるのかもしれません……でも、デジサーチのスタッフは話し合い、みんなでわざわざ壁を高くしました。誰のためでもなく、自分たちのプライドのために──R.Y

※このメディアは企業再生案件など、センシティブな話題があるため、登場人物は全て仮名で表記しております。

Good Opportunity

機会に、活かされて

コンゴからやってきたお医者さん・ギムさんと、久しぶりに会いました。3年前、COEBIで初めて出会ったときの彼は、難民申請中の外国人、つまりは「難民」でした。

前回会ったのは、日本の在留カード取得を祝うため。今回は、大学院卒業のお祝いに。頻繁にLINEをするわけではないけれど、節目には律儀に連絡をくれるので、会うことになります。彼に起きた良いことは、自分ごとのように喜べる。そんな友人の一人です。

ギムさんが我が家のリビングに3ヶ月間滞在していたのは、2019年のこと。COEBIに入居する難民支援NPO・WELgeeからの紹介でした。外国人という壁に阻まれて、なかなか賃貸物件を見つけられない間、我が家に居候していました。

母国を逃れ、3週間、水道橋駅前のマクドナルドで夜を過ごす日々からはじまった日本での暮らし。「自分の人生で最悪の経験だった」と振り返るギムさんには、幸いにも、医療という専門的な知見と、諦めない心がありました。それをWELgeeは「逆境パッション」と呼びます。

ギムさんの持つ逆境パッションが、彼に日本での良き縁を運んできたのかもしれません。お医者さんであるギムさんは、医療関係者から特に真摯なサポートを受けました。

「あなたなら、我々が何をやっているか、見れば分かるでしょう」

産婦人科医であるギムさんに、帝王切開の現場を視察させてくれたお医師さんもいました。ギムさんはやがて、夜間の配送センターのアルバイトに代わって、総合病院の外国人対応の仕事を得ました。

「やっぱり、私はドクターだから」

医療を通して日本社会と関われることが、とてつもなく嬉しかったそうです。

ギムさんは慣れない仕事に追われるめまぐるしい日々を送りながら、「難民となった時間を、絶対に無駄にはしない」「今の自分に、何ができるのか」と、自問自答しながら、今後の人生の具体的なプランを定めていきました。

2020年4月、ギムさんは大学院に入学しました。公衆衛生のスペシャリストになるためです。この専攻に心惹かれたのは、一人の医師として目の前の患者に向き合うだけでは解決できない、構造上の問題にチャレンジできるから。公衆衛生は、伝染病が蔓延し、環境衛生の改善が急務で、医療体制が整っていないコンゴにとって、人を救うための実践知そのものです。

スワヒリ語、フランス語を母国語とするギムさんにとって、英語と日本語を使う業務と授業に追われる毎日は、苦難の連続でした。それでも、日中は総合病院での業務をこなし、夜は英語の授業を受け、日本語のレポートを書き続けたギムさん。見事2年で公衆衛生の修士号を取得してみせました。

* * *

”Opportunity”

ギムさんとの会話には、この単語が頻出します。機会によって人が活かされることを、誰よりも体感してきた、彼らしい言葉のチョイスです。

そんな彼には、実現したいビジョンがあるそう。それは、コンゴの若い世代に学びの機会を作ることです。

僕が会っていない間に、病院マネジメントを専門とする日本の医療関係者を巻き込んで、NPOを既に設立していることに驚きました。

このNPOの目的は、コンゴをはじめ、アフリカで活躍できる医療従事者を育てること。手始めに、コンゴの医学部生30名を対象に、半年間のオンライン教育プログラムをはじめたそうです。

毎週金曜日、寄付で揃えたWi-fiと一台のパソコンの画面越しに、コンゴの次世代へのDr.ギムの講義がはじまっています。ギムさんのビジョンは、プランとして、小さく、コツコツと、動き出しています。

「終わらない紛争」「繰り返される市民攻撃」「日常的な略奪」

「800万人以上の食糧難」「300万人以上の国内避難民」

「エボラ出血熱」「新型コロナウイルス」

コンゴはあらゆる困難に直面し続けている国だ、と言えるかもしれない。

その未来を変えるためにも、若い世代に機会を作りたいと、ギムさんは僕に何度も言いました。

一国の未来を変えるほどの人達を育てるなんて、いつ実現できるかも分からないし、本当にできるか分からないし、もしかしたら、そんなことは不可能なのかもしれません。

でも、少なくともギムさんは、誰に頼まれることもなく、このビジョンにただ突き進んでいくんだろうな、と思いました。

カフェを出て、新宿の街を散歩し、JR新宿駅の改札の前に着いても、ギムさんの話は尽きません。僕たちは、改札近くのカフェに再び入り、話を続けました──R.Y

※このメディアは企業再生案件など、センシティブな話題があるため、登場人物は全て仮名で表記しております。

Future never knows

超短期現実主義

デジサーチ田中さん、今日はCOEBIの起業家・日向さんから「投資家選び」の相談を受けました。

茨城からイギリスへの”強烈な留学体験”から起業した日向さんは「メタバースでの英会話サービス」を、コロナ禍の前からCOEBIでコツコツと作ってきました。今は、インドネシアで人気が沸騰!もっとサービスを伸ばすために、投資家を50社ほど訪問したそうです。

「NFT系の投資家の方からは、出資も仮想通貨でしたいと言われていて……そういう投資家を入れたら、次の資金調達で困りますかね?」

「少し性格が合わないとしても、次のラウンドで追加投資してくれる見込みのある投資家には、入ってもらった方がいいんでしょうか?」と日向さん。「もし、田中さんが僕の立場だったら、どうしますか……?」という相談でした。

さて、田中さんの判断基準は?「僕が日向さんだったら、将来のことを考えすぎない。その人が投資家とした入ってくれたら、気持ちいいか、楽しいか、という視点で決めますね。もし楽しくて、自分の100%のパフォーマンスが出るなら、結果的に次に繋がるからです!」

どうなるか分からない未来にモヤモヤするより、すぐ先の自分の心の動きを考えてみる──「超短期現実主義」と、田中さんは表現します。

「耐えて、耐えて、結果的に無理だったから、爆発してしまう起業家も多いんですよ。自分がどうなったらストレスを溜めてしまうのか、理解しておくことが起業家には大事。だけど、わがままであってはいけない。そのバランスですね!」

──R.Y

※このメディアは企業再生案件など、センシティブな話題があるため、登場人物は全て仮名で表記しております。