ORANGE

New Contenders

賑やかな食卓、「新しい友」はどちら?

デジサーチが入居している「恵比寿ガーデンプレイス」。商業棟がリニューアルされ、三越があったところに、スーパーのライフと明治屋ができたので、覗きに行きました。

恵比寿への出店ということで「今までにないライフを!」と、張り切るライフ。愛知県産トマトワンパック410円、宮崎産マンゴーワンパック1900円と、親しみやすい価格から高級路線へ舵を切りました。

一方、お隣の明治屋。ライフを意識してか「お値打ちなモノを!」と、広尾店よりお安い価格で、お客さんたちの様子を伺います。

「ライフに、それを求めてないよ〜」「トマト10種、イチゴ10種って買い物が楽しくない?」と、デジサーチの中でもちょっとした話題に。

さて、ガーデンプレイス周辺の皆さんは、どっちがお好みなのでしょうか?答え合わせは、まだ先ですね。新しい場所に、新しいコンセプト。切磋琢磨すること、やっぱり大事です。出来立てのフードコートでご飯をいただきながら考えた、GW明けのお昼

──R.Y

※このメディアは企業再生案件など、センシティブな話題があるため、登場人物は全て仮名で表記しております。

Heart Station

いつかの「宇宙ステーション」

海外にいると、日本にいる時より、なんだか人とすごく仲良くなれる。そんな経験が、皆さんにもありませんか?

外国人が日本人よりもフレンドリーだから、という話ではありません。たとえ、その相手が日本の人であったとしても、話す場所が海外というだけで、グッと距離が縮まったり。今日は、そこから始まる「身を置く環境」と「人間の変化」にまつまる断片的なお話を、少しずつ。

* * *

今年の3月に開催されたサンフランシスコの「GDC」、ロサンゼルスの「NFTLA」。メタバース、Web3.0、NFTといったテックの最先端に触れられるイベントで日本からの参加者は10名ほど。しかし、その現地でクロコム出身の起業家3人が、偶然居合わせたそうです。

「NFTの価格形成で大事なのは、イキりとクジラなんですよね」

「実際に、クジラと仲良くなれた人もいたりして!びっくりでしょ?」

COEBIの月1定例会に、海外で仕入れた学びを、現地の興奮と共に運んできてくれた三人が口を揃えて言っていたのは「海外の方がすごく仲良くなれるよね」という話でした。実際に、たまたま現地で合流することになった三人は海外で距離もグッと近づき、帰国後も一緒に勉強会をしているそうです。

海外にいるというだけで、いつもより敏感に働く心のセンサー。日本とは勝手が違うからこそ、何をするにも直面し続けるちょっとした困難。そんな時に、言葉と文化を共有できる人と会えれば、連帯感も自然と生まれてきます。日本的な同調圧力からの解放感と相まって、すごく仲良くなれるのも、なんだか分かる気がします。

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パリへ海外出張に出かける予定があったデジサーチの田中さん。そのことを知ったCOEBIの起業家の創くんから「今、アムステルダムにいるんですが、パリに会いに行ってもいいですか」と、メッセージが来て、少し驚いたそう。今の時代、ZOOMでいい。日本でも話す機会はあったし、少し前にも1時間くらい対面で話をしていたそうです。

「わざわざ、パリまで来なくていいじゃないですか。でも、彼は経験的に知っているんですよ、海外だともっと本音で話せるのを。僕と海外で話せば、自分の中の何かが変わるんじゃないか。そう直感的に思ったから、メッセージをしてきたんだと思いますよ」

* * *

「ほら、宇宙飛行士の人たちって、地球に帰ってきたら、価値観が変わったと、みんな言いませんか?あれですよ!あれ!宇宙ステーションに10日もいれば、人間なんて変わるんです。僕は、もちろん宇宙なんて行ったことはないですけど、それと同じ話ですよ」と、田中さんは言います。

90分で地球の周りを1周して、45分ごとに昼と夜が入れ替わる今までにない生活。太陽と地球が相対的に見える窓からの景色。当たり前だと思っていた国境も、もちろん見えません。

「思っているより、人間って弱くて、無意識でも周りからの影響を受けて、変わるもの。だから、身を置く環境によって、柔軟に変化するんです」

期間にすれば短いけれど、密度と濃度が高く、自分の思考がガラッと変化した。そんな経験が、あなたにはありますか?

自分にとっての「宇宙ステーション」はどこだったのか、少し振り返るのもいいかもしれません──R.Y

※このメディアは企業再生案件など、センシティブな話題があるため、登場人物は全て仮名で表記しております。

Just be Creative

進む「いいとこ取り」

「今日から新しい美容室に移りました」

ずっと担当してくれていた美容師さんから、デジサーチの田中さんに連絡があった。そこで早速、美容院に行ってみると、びっくり!その美容師さんだけで運営する「一人用店舗」になっていました。

お店に来るのは、これまでのお店で担当していた指名のお客さんだけ。経理だったり、薬剤を仕入れたり、シャンプー台のメンテナンスだったり……美容室運営の「面倒くさいこと」は、外部の会社が全て仕組みとして提供してくれそうです。

実力のある美容師さんが独立しても、面倒くさいことにわずらわされず、お客さんのことだけを考えて、伸び伸びと働けます。

「ややこしいことは、全部お任せ。この働き方、これから増えてくる気がしませんか?」

楽しそうに話す田中さんは、なんだかひらめいたようでした。

たとえば、セレクトショップ。

「どこから仕入れますか?」とオファーが来て、仕入れる、仕入れないを決められる。売れたら、自動で配送をしてくれる。バイトを雇いたいとなったら、派遣をしてくれる。もちろん、お金の管理も全部やってくれる……セレクトショップのオーナーは、花形の買い付け業務で自分のセンスを存分に発揮するだけでいいんです。

これだったらセレクトショップやってみたい、と思う人が、とても増えそうじゃないですか?

「変な話、”セレクトパン屋さん”ができても、おかしくないんですよ。自前でパンを作らない、冷凍のパン屋さん。冷凍のパン生地をどんどん提案してもらった中から、自分のセンスで選んで、どう売るかのクリエイティブの部分だけを考える仕事になるはずです!」

独立開業で、自分の得意な仕事だけ、やりたい花形の仕事だけをする働き方。DX化で経理やバックオフィスが効率化・外注できることで「仕事のいいとこ取り」が進んでいく、かもしれませんね。

UUUMを離脱したYouTuberたちは、今まで会社がやってくれていた、請求書を出したり、契約を結んだりする「ややこしいこと」をやってくれる人を探している、とききます。

美容師、デザイナー、YouTuber──クリエイティブなセンスを活かして仕事をする人たちは、利益を会社が得て、そこから給料を払ってもらう「所属契約」から、ややこしいことは全部お任せ、クリエイティブに集中して伸ばした利益を分け合う「エージェント契約」へ。

エージェントといっても、自分の権利や利益だけを確保して、汗をかかない名ばかりのエージェントではありません。バックオフィスの面倒くさい業務に、 DXを駆使してどんどん取り組んでくれる泥臭いエージェントが、どんな事業領域にも広がっていくのではでしょうか?

* * *

考えてみれば、デジサーチがずっとやってきたのも、そういうことだったのかもしれません。販売ページのクリエイティブ製作、EC運営、広告運営、資金繰りのアドバイス……商品のクリエイティブに集中してもらえる環境を整えて、新ブランドをわずか2、3ヶ月で立ち上げて「ブランドオーナー」になる体験をサポートしてきました。

まだ世に出ていないないけど、キラリと輝く商品を作れる人達を、クリエイティブと経営の両面から、コツコツとサポートしてきたのがデジサーチです。

「クリエイティブ」「経営」というと、なんだか偉そうに思えるかもしれませんが……老舗の当主や、独立開業したばかりのデザイナーさんたちと膝を突き合わせて、時には大胆な決断を一緒にしながらも、毎日細かい改善に取り組んでいます。泥臭いことを、汗をかきながら、毎日コツコツと──R.Y

※このメディアは企業再生案件など、センシティブな話題があるため、登場人物は全て仮名で表記しております。

 

First Principles

道理って「自分どおり」

「そういえば、面白い記事があったんですよ」田中さんが、先日亡くなったオシム監督の追悼記事を見せてくれた。

書いたのは、何度もオシム監督を取材してきた記者。当時、記者は監督の言動を「どこか謎めいているな」と考えていたそうです。例えば、優勝した時のこと。選手からの胴上げを辞退して、喜ぶそぶりをあまり見せずに「これが最後のタイトルにならないよう願っている」と言ったかと思えば、優勝争いをしている時には「優勝しないといけないのか」と言ってみたり。

こうした言動を理解できなかった記者ですが、後になって「オシム監督は、成功か失敗かという結果よりも、そこへの挑戦のプロセスが人生を豊かにすると考えていた」という自分なり解釈を得たという記事でした。そのヒントになったのは、次の「論語と算盤」の一節だったそうです。

理にのっとって一身を終始するならば、成功失敗のごときはおろか、それ以上に価値ある生涯を送ることができるのである” ( 渋沢栄一『論語と算盤』)

田中さんが注目したの「道理」という言葉でした。

「たぶん、胴上げをされることは、オシム監督の道理に反していたんでしょうね。”これが最後のタイトルにならないよう願っている”という言葉も、一度の達成ぐらいでいい気になってはいけない、という彼の道理に従ったチームへの助言だったのかもしれません」

「この道理って言葉なんですけどね、それが世の中で既に決まっているもので、社会的同調圧力で押し付けられる論理だったら……もったいない!と思います。ではなくて、道理が自分が輝ける道、という意味なら、”道理にのっとって一身を終始する”価値はあると思いませんか?」

田中さんの言う「道理」とは「ここを進んでいけば、存分にパフォーマンスを発揮できる!」と、自分で理解できている道、ということでしょう。

オリジナリティ溢れる「考えて走るサッカー」でファンをワクワクされたオシム監督には、それを実現する彼なりの道理があったように、挑戦する人の数だけ道理があるはず、という発想です。

「自分に嘘をつかなくていい道理であることが大切。道理って”自分どおり”という意味なんじゃないですか?」

自分に無理をしていないか、自分が輝けるのか。世の中の理ではなく、自分だけに見える道に沿って。これって、チェンジメイクのヒントかもしれませんね──R.Y

※このメディアは企業再生案件など、センシティブな話題があるため、登場人物は全て仮名で表記しております。

Over the Conflict

あれもこれもじゃ、うまくいかない

「コンフリクトが起きているんですけど、それに気づけていない人が多くて」

起業家から「こんな事業を考えています。どう思いますか?」と、日々相談を受けるデジサーチの田中さんが、ボソッといました。

“コンフリクト”

この言葉は、デジサーチやCORBIの起業家の共通言語。もしかしたら、耳にしたことのある人もいるかもしれませんが、どういう意味なのでしょうか?

これは、デジサーチがビジネスを目利きする時の基準の一つ。「両立し得ないものが、事業の中に混在してしまっている状態」を、「コンフリクトが起きている」と呼んでいます。

* * *

飲食店を例に、コンフリクトを考えてみましょう。

まずは「ビジネスモデル的なコンフリクト」。

「こだわりの創作イタリアンと、本場ナポリで修行したピザで勝負するお店」というコンセプトで起業しようとする料理人がいるとします。

「同じイタリアンだからといっても、この二つの料理を一緒にやらない方がいいんですよ!」と、田中さん。

丁寧に作って盛り付けるならば、お客さんが入店してから出すまで、時間がかかり、回転率が悪くなります。一方、ピザ屋さんは、早さが命。パッと出した焼き立てを美味しく食べてもらい、早く帰っていただいた方がいいはずです。

「手のかかる料理には、それなりのお皿と綺麗な内装、丁寧なサービスが必要です。でも、ピザだったら、カウンターでサクッと出せばいいだけじゃないですか?メニューのせいで、お店の設計にまでコンフリクトが起きているんです」

二つのメニューを同じ店で出すことで、価格だって変わってしまいます。創作調理のせいでかかる手間が、ピザの価格に上乗せされれば……。これって、お客さんは何も嬉しくないですよね?

創作イタリアンとピザ。事業の構造上、両立し得ないものを同居させてしまっている。その状態を「ビジネスモデル的なコンフリクトが起きている」と、デジサーチでは表現しています。

もう一つは「イメージ的なコンフリクト」。

例えば、ビーガン専門店がお肉も販売していたり、オーガニックワイン専門店を謳いながら、オーガニックじゃないものも端っこに一応置いておいたりするとします。

「お店のターゲットが増えるからいいじゃないですか、という人もいるんですが……でも、それじゃお客さんの信頼は、得られないですよね?」

本来は、価値観を提示して、強く惹きつけるべき顧客。その感情をビジネスモデルが無視していることを、「イメージ的なコンフリクトが起きている」という言葉で、デジサーチはとらえます。

* * *

では、コンフリクトが起きない事業を考えるには、どうすればいいのでしょうか?

「特化が、必要なんです」と、田中さんは言います。

起業家には、思い描くビジネスを貫く芯のようなものがあるはず。その芯だけを削り出す作業を、デジサーチでは「特化」と呼んでいます。

創作イタリアンも出したいし、うーん、でも得意のピザも出したいなぁ……そんな「あれも大事、これも大事」ではなく、「これだけが大事!」と極端に振り切れるかが、事業の立ち上げ時の起業家には、問われるそうです。

言うは易く行うは難し、「これがなかなかできる人がいない」と田中さんは教えてくれました。

自分が考えた事業アイデアにコンフリクトがないか、特化できているかの確認には「一言で説明してみる」のが、効果的だそうです。

「考えたビジネスを、10秒、20秒で言えなかったら、コンフリクトがある、特化できてない可能性が高いですね」

確かに「エレベーターピッチ」なんて考え方もありますね。人の心を動かすビジネスは、ほんの10秒の会話の内に芽をのぞかせる、というものなのかもしれません。

「アイデアを欲張って起業しようとする人が多いけど。鋭く起業しなきゃ、ほんとはね」

極端に、言い切れない。思い切って、振り切れない。ついついバランスをとってしまう、起業家たち。必要なのはちょっとした勇気、なのかもしれませんね──R.Y

※このメディアは企業再生案件など、センシティブな話題があるため、登場人物は全て仮名で表記しております。

Make Sense

僕にしかみえないツボ

「英会話コミュニティなのか、それとも英語学習ツールなのか。100回くらい聞かれましたよ。どっちも、と思っていて。これがコンフリクトですよね?」 COEBIの起業家日向さんは、サービスをローンチしたばかりの頃を、そう振り返ります。

日向さんが運営するのは「気軽に留学ができればいいな」という想いではじめたオンラインの英会話サービス。メタバースで知らない海外の人と盛り上がれるそう。非英語圏のアジア・アフリカを中心に8カ国9地域にユーザーがいて、インドネシアでtiktok世代の若者にウケている、ちょっとした人気サービスです。

冒頭の「英会話コミュニティか、英語学習ツールか」は、日向さんが直面したコンフリクトです。 「作りたいのはコミュニティなんですが、学習できるという面もあるので。どちらかとは、言い切れてなかったです」

コンフリクト解消のために行ったのは、提供価値の見つめ直しでした。サービスを気に入って課金してくれているユーザーたちは、一体、何に魅力を感じていれているのか。

「文法をちゃんと覚える、豊富なボキャブラリーで話す、という道筋で英語をできるようになりたい人はいなくて、僕たちのユーザーは、英語を話している自分になりたい、その姿自体に強い憧れを抱いてると気がついたんです」

たどり着いたのは「抑圧からの解放」というキーワードでした。ユーザーは「海外でも生きられる自分」「英語を話せる自分」への憧れから、サービスを使ってくれていました。

「その憧れって、実は国内で感じる抑圧の裏返しかもしれないと思って」

見知らぬ海外の人と英語での気軽な触れ合いことを楽しむ。その心の奥には「ここから、解放されたい」という気持ちが潜んでいるのではないかと、仮説を立てました。

そこから1ヶ月、「抑圧」を切り口に徹底調査。GDP、経済成長率、人口、英語のニーズ感、政治的・宗教的背景を調べました。経済成長で生まれる機会にアクセスできてないという抑圧か、宗教・政治的な抑圧。どちらかを感じているユーザーが多そうな8カ国に絞ってサービスを届けてみたところ、これまでよりユーザーに深く刺さるという実感を得たそうです。

「ブラジルとエクアドルなら、断然ブラジルの方がマーケットは大きいのに、エクアドルの方が課金率がいい。自分たちの仮説に、自信を深めましたね」

日向さんはそこから「どうすれば、抑圧からの解放感を提供できるか」という視点に特化して、サービスの作り込みを進めました。

「海外の人と繋がれてる自分、イケてるよね?そういうワクワク感を、肌で感じられるようにしたいんです」

それは海外に着いたばかりの短期留学生が、英語で書いたキャプションと写真をすぐにインスタに投稿する、あの気持ち、あの高揚感。

「僕も、そうでしたよ」と、ちょっと恥ずかしそうに振り返る日向さん。数ある海外の楽しかった思い出の中でも、海外で最も解放感を得た体験を教えてくれました。

「海外の大学の寮にあるシェアキッチンで、お酒を飲みながら、チルしてる時に『こんなに色んな国の人と一緒に楽しめていて最高だな』『これを味わいかったんだんな』と、心底思った瞬間があったんです」

勉強漬けの茨城の進学校からイギリスへ。日向さん自身が、留学先の日々で得た解放感に、提供すべきサービス体験の答えがありました。

「作りたかったのは、学ぶための教室じゃなくて、話したいから話すたまり場。そうハッキリしてから、グッとサービス作りがスムーズになりました」

こうして「教室ではなく、たまり場を作る」という方向性に特化することで、コンフリクトを乗り越えた日向さんには、新しい発見もありました。

「教室よりもたまり場の方が、実は英語を勉強する気が起きるんです」

実際「ちょっと待ってね」と一旦会話を中断し、調べてから会話を続けるユーザーは多いそう。たまり場で仲の良い人を見つかると、その人たちとチルできている、という高揚感が生まれる。すると自然と英語を話す障壁が下がり、たくさん英語を話すようになります。

その経験が「あ、私も英語話せるじゃん!」という自信と「これはうまく言えないから、勉強しよう」という学習を生む。たまり場を起点に、高揚感と学習意欲が湧き上がるサービス像が見えてきた、と日向さんはいいます。

「学びたくて話す、ではなく、話したいから話す。そうして話してる中で、実は学べている。そんなサービスにできそうです」

最後に「特化」とは何か、せっかくなので日向さんに聞いてみました!

「特化ですか?ユーザーのツボの押しどころを定めること、じゃないでしょうか」──R.Y

※このメディアは企業再生案件など、センシティブな話題があるため、登場人物は全て仮名で表記しております。

Visible Band

わかると、みえる

昨日スタッフの田中さんとした、ちょっとした会話。

僕「HIPHOPの共通感覚ってなんだろう。オーバーサイズの服に、ニューエラのキャップを被って、スニーカー」

田中「分かる。確かにそう」

僕「世の中の7割と言わず、9割がこのイメージ。でも、それを覆したラッパーもいる。細身で革ジャンで出てきた人がいた」

田中「それは、共通感覚が強い人。わかってるから、際で目立てる。時代を作るのは、そういう人だよね。その人は革ジャンでも、すごく汚い系じゃないでしょ。キレイ系では?」

僕「そう、そう。モード系」

田中「音楽も電子系で、繊細系。ストリングスなんか入ってたりして」

僕「結構、当たってる。やっぱり、共通感覚ってあるんだね」

* * *

世の中の7割がわかれば、いろいろみえる。

真ん中がわかると、際がみえてくる。極がわかると、もう一つの極もみえてくる。

わかると、みえる。けど、わかっていつづけるのも、楽じゃないらしい──R.Y

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The Beginning

はじまりの予感

「あの話、詳しく聞かせてもらえませんか」

突然連絡をくれたミャンマーの水澤さんが、ひさしぶりにオフィスにやってきました。ヤンゴンで会った4年前の水澤さんは、本業のマイクロファイナンスとITを掛け合わせて、ミャンマーの暮らしを変えようとしていました。しかし、昨年起きてしまった軍事クーデター。できないことも増えてしまいましたが、水澤さんは諦めず、今度はITではなく一次産業で、ミャンマーの人たちの新しい生業を作ることにした。

そこで、水澤さんがふと思い出したのが、ヤンゴンの車の中での4年前の会話です。デジサーチの田中さんがたのしそうに語ったのは、世にも珍しい「コーヒーの作り方」でした。

* * *

「元凶は、プールにあるんですよ」

農家、仲介、プール、バイヤー、海外バイヤー、ロースト……壁に貼ったホワイトペーパーにコーヒーの製造工程を書きながら、田中さんはそう説明しました。

収穫した豆を発酵させる「プール」の工程が入ると、プールの所有者に買い叩かれてしまいます。「コーヒー作りで農家さんが幸せになれない理由は、プールにある!」

それが農業の盛んなミャンマー東部シャン州の農家さんを田中さんが訪ね歩いた得た答えでした。

かつて田中さんが水澤さんに車の中で話したのは、そんなプールを使わない珍しい製法でした。

デジサーチでは、こだわりのコーヒー農家さんが趣味で小さくやっていたこの製法に目をつけて、サブプロジェクトして、社内でコツコツと研究を続けています。この製法には名前さえなかったので、デジサーチで独自に命名しました。

頑張った人が、こだわった人が、ちゃんと報われる仕組みが作れるかもしれない……ミャンマーで、お母さんが一人で営業する個人商店のような、小さくまじめに生計を立てる人たちと、マイクロファインナスで向き合ってきた水澤さんにとって、この製法で作れるかもしれない新しい生業は魅力的でした。

農家さんが独自のブランドを持つ「本当のフェアトレード」、ミャンマー発の世界的コーヒーブランドを、農家さんたちと作っていくことも夢じゃない──田中さんと水澤さんとの久しぶりの再会は、そんな話で盛り上がりました。

再会の最後に、田中さんはご縁のあったブラックブラックハニー製法ができるミャンマーの農家さんを紹介しました。田中さんいわく「外国から来た僕の素朴な質問にも、丁寧に答えてくれる優しい人。ワインにもとっても詳しい、こだわり派の農家さん」

「きっと水澤さんとも仲良くなれるはずです」

「次までに、お会いして話を聞いてきます」

次のミーティングが、自然と決まる不思議。デジサーチも水澤さんも、専門は金融です。コーヒーとSIB、コーヒーとマイクロファイナンス。掛け合わせて、新しい何かがうまれるかもしれませんね。

といっても、一国に、新しい生業を作るなんて、そんなに簡単なはずがありません。じっくり、コツコツ、着実に前に進めていくしかない。水澤さんは、そんな覚悟を持って、ミャンマーに根を張っている人だと、僕は知っています──R.Y

※このメディアは企業再生案件など、センシティブな話題があるため、登場人物は全て仮名で表記しております。