大学の工学部時代に、環境・エネルギーシステムを専攻した中での一番の学びは、「ライフサイクル」でものを考えるということ。

環境にやさしいエネルギーも、そのやさしいエネルギーを生み出すためにエネルギーをたくさん使ってしまうならば、それは環境にやさしくない、ということになる。

そうした「循環する工程」で環境を捉えることの意義を働き始めて15年近く経った今も、ものづくりに寄り添う仕事をしている中で日々、感じている。

ものづくりの世界でも、いわゆる「エコロジーな」素材を使った製品が多く世に送り出されているが、まだまだ長持ちするかというところで課題があり、頻繁に買い替えるという大量消費に繋がってしまう、という実情もある。試行錯誤の段階と言えるだろう。

昨今では、AIが製品をデザインする、というアプローチが世のあちこちで始まり、その熱狂ぶりが物凄い。「アイデアを形にする」ハードルが大きく下がったことは、クリエイターとしては歓迎すべき動きだ。老舗ものづくりメーカーが老舗たるには、時代に適応しながら、真新しさを取り入れていくこと。その土台としての、永く使ってもらえる「モノの良さ」を実現する技術。真新しいものが世に生み出される中でも、モノの良さの根幹として、揺るがないもの。老舗メーカーの経営者の方と膝を突き合わせて、「一生モノ」のものづくりに携われるというのは、大量にアイデアが形になる今の時代だからこそ、より味わい深く感じられるのかもしれない。──D.S